1. さとうきび (Sugar cane)
 さとうきびは、イネ科(Gramineae)サトウキビ属(Saccharum L.)の大型の多年生草本植物です。さとうきびは砂糖を得るために栽培され、しょ糖を含む糖汁が茎から抽出されて砂糖が製造されます。茎は円柱状で多くの節を有し、高さ1.8~6 m、茎の直径は2~2.4 cmに成長します。日本では1~3月にかけて収穫が行われます。製紙用繊維利用植物の分類としては茎稈繊維利用植物に該当し、さとうきびと同じイネ科に属するわら、竹と並ぶ代表的な製紙利用植物となっています。
 原産地はニューギニアで、約一万年前から栽培が始められたとされています。現在は、海外ではブラジル、アメリカ、中国、タイ、インドなどで、日本では沖縄県と鹿児島県南西諸島で主に栽培されています。 

2. 農業副産物としてのバガス (Bagasse as an agricultural by-product)
 製糖工業において、さとうきびの茎から糖汁を抽出した際、搾りかすとして発生する繊維質がバガス(bagasse)です。工場に集荷されたさとうきびから発生するため、農地から個別に運搬する手間が不要な農業副産物です。
 令和4年産の日本のさとうきび収穫量約127万トンの内、約25%がバガスになったと仮定すると、年間約32万トンのバガスが発生した計算になります。バガスは製紙原料として利用される他に、製糖工場の燃料や飼料等に再資源化されています。
 茎の外側の外茎部は、繊維を多く含んだ維管束が環状に並んでいて、約半分がセルロース分です。内茎部はピス(pith)と呼ばれ茎の重量の21~31%を占めますが、0.4 mm以下のペントサンを含んだ非繊維細胞がほとんどのため、良質なパルプを得る場合には取り除かれます1)
 バガスを製紙利用するためのパルプ化方法としては、ソーダ法、クラフト法などがあり、得られる繊維の長さは約1~3 mmです。バガス製の紙の強度は広葉樹パルプと同程度です。

1)印刷局研究所「非木材パルプ特集」(1976)
 Research Institute of National Printing Bureau, Japan: Special Issue on Non-wood Pulp (1976)