1. 綿の特徴(Characteristic of cotton)
綿(わた)は、アオイ科(Malvaceae)ワタ属(Gossipium)の一年生植物で、種子の表面に作られる繊維が木綿として製紙利用される代表的な種毛繊維利用植物です。綿の果皮が開裂すると綿毛が露出してコットンボールになります。コットンボールから分離した長い繊維がリント,中に含まれる種子の周りの短い繊維がリンターです。繊維長は、リント10~56 mm、リンター2~12 mmです。
木綿は植物体から採取された状態で,すでに一本一本の細長い繊維状細胞のみで構成されている点が特徴です。重合度の高いセルロースを高純度に含まれていて、繊維の長いリントは衣料用途に広く利用されています。
世界では、木綿を銀行券(Banknote)の用紙原料として採用している国が多く存在します。これは、木綿製の用紙の耐久性が高いことと、手触り感などに特有の風合いを有するので一般の用紙との差別化が図れるためです。
2.綿栽培の起源 (Beginning of cotton cultivation)
綿の栽培が始まった起源については諸説ありますが、その歴史は大変古くメキシコでは約8,000年前から栽培されていたとされています。日本でも江戸~明治時代には盛んに栽培されていました。織物の原料として栽培されていた綿が、いつ頃から製紙原料にも利用され始めたのかは不明ですが、繊維状の細胞がそのまま採取できる木綿は製紙原料としても便利な材料です。
人類の歴史では、「織る」技術は「漉く」技術よりも古く、糸を紡いで布を織る技術は、製紙技術よりもずっと前の時代に発明されています。紙はメディアとして文字情報の記録に優れた素材ですが、文字を発明されたのは紀元前3,000年頃です。
古代の人々が日々の生活で求めたものは、紙よりもまずは布製品ですね。
3. 綿の生産量 (Production volume of cotton)
2021年の世界の綿花 (Cotton lint, ginned Production) 生産量は約2,500万 t で、インド(India)、中国(China)、アメリカ(United States)、ブラジル(Brazil) などで多く生産されています。
綿の栽培では、殺虫剤や農薬が多く使用されることによる環境ダメージや健康被害、さらに不当労働などが国際的な社会問題となっています。対策として、近年はオーガニック(Organic)なコットン栽培やフェアトレード(Fairtrade)の取り組みが進められています。一例を紹介すると、ヨーロッパ中央銀行 (European Central Bank)によるサスティナブルコットンプログラム(The Sustainable Cotton Program)は、2014年から2023年までにユーロ券用紙に使用される木綿(Cotton)を、段階的に100%サスティナブルコットンとする取り組みです。