植物の細胞は植物体の中で分化して、 形態や機能が異なる細胞となって構成されています。これらのバイオマスを製紙用に使用するためには、パルプ化により植物体組織を細胞レベルで解きほぐし、細長い繊維状細胞が解繊された状態にする必要があります。したがって、製紙用に利用するバイオマスとしては、細長い繊維状細胞が多く含まれることが理想です。

 非木材の細胞間に存在する物質は、木材と比較すると一般にペクチンが多くリグニンが少ないことが特徴です。ペクチンはアルカリ溶液による分解溶出が容易であり、リグニンを多く含む木材と比較してパルプ化して繊維を取り出すことが容易です。非木材繊維は、パルプ化に強アルカリ薬品や高温高圧を必要としないため、比較的マイルドな条件で少ないエネルギーでパルプ化が可能です。そのため、非木材繊維は近代的化学工業が発展する以前から広く製紙利用されていました。
 日本では江戸時代まで、弱アルカリ性の性質を有する木灰や石灰を加えて加熱することにより、靭皮繊維のパルプ化が行われていました。