A. 化学パルプ(Chemical pulp)
 蒸解(cooking)時に化学薬品と熱エネルギーを用いることにより、繊維間の結合物質を溶解させて得られるパルプです。ソーダパルプ( Soda pulp)、サルファイトパルプ(Sulfite pulp)、クラフトパルプ(Kraft Pulp)の3種類が代表的です。
 化学パルプでは、繊維同志を結合している中間層膜(Middle lamella)に多く含まれるリグニン(lignin)、ペクチン(pectin)などの成分が溶解して取り除かれます。抽出されるパルプはセルロース成分の比率が高く、用紙の強度が高く色相の経時変化が少ないことが特徴です。

B. ソーダパルプ( Soda pulp)
 最初に開発された木材の化学パルプ化方法です。水酸化ナトリウム(NaOH)を主成分とする蒸解液を使用し、チップ化した木材を高温高圧で処理することによって製造されます。アルカリ薬品を用いたシンプルな薬品配合の蒸解方法です。
 楮、三椏などの靭皮繊維のパルプ化では、水酸化ナトリウム(NaOH)の他にソーダ灰(Na2CO3)を使用する方法もあります。靭皮繊維の繊維結合物質として含まれるペクチンは、アルカリ溶液に容易に溶解する特徴があります。 

C. サルファイトパルプ(Sulfite pulp)
 亜硫酸塩(sulfite)を用いて蒸解したパルプです。木材中のリグニンはスルホン化され、リグニンスルホン酸となり酸加水分解されて溶出します。
 9世紀後半に開発されたサルファイト法は化学パルプの主流でしたが、現在では蒸解薬品の回収や用紙強度に優れたクラフト法に置き換わっています。
 非木材の葉繊維利用植物のアバカは、サルファイト蒸解によって得られるパルプの白色度が高く,叩解処理が容易で強度が高いことが知られています1)

D. クラフトパルプ(Kraft Pulp)
 蒸解薬品に水酸化ナトリウム(NaOH)と硫化ナトリウム(Na2S)を用いて製造されるパルプです。現在の主流となっているパルプ化方法です。硫化ナトリウムを加えることによって、水酸化ナトリウムのみを用いるソーダ法と較べて脱リグニン速度が向上します。
 蒸解薬品の回収方法が確立されており、ほとんどすべての樹種に適用できる優れたパルプ化方法です。

1) Hiroshi Hori, Kazuo Kosukegawa, Masakazu Morimoto: Monosulphite Cooking of Manila Waste Rope, JAPAN TAPPI JOURNAL, 13(2), 107(1959)