A. 抄紙機 (Paper machine)
 パルプ化された製紙原料は、洗浄、精選、調合などの工程を経て、濃度を調整した懸濁液が抄紙機(paper machine)に送られます。
 抄紙機では、ワイヤー部(Forming section)、プレス部(press section)、乾燥部(dryer section)の順に水分が除去されます。最初のワイヤー部では、網で水が濾されて平面状に繊維が堆積した湿紙(wet web)が形成されます。次のプレス部では、ロールの間隙の圧力によって湿紙に含まれる水分が絞られます。最後に乾燥部で加熱して水分を蒸発させます。その他、用紙に求められる特性に応じて、表面塗工を行うサイズ部(Size press section)や表面性を向上させるカレンダー部(calender section)などが加えられます。
 伝統的な抄紙方法 では1枚ずつ網で濾して製造されますが(Fig. 1)、抄紙機ではエンドレスな網を使用することによって、連続的な湿紙の製造が可能です。抄紙機は、産業革命の時期に開発されて紙の大量生産を可能としました。
 抄紙機の種類は、ワイヤー部(Forming section)の構造によって、長網抄紙機と円網抄紙機に大別されています。

1) Jihei Kunisaki: Kamisuki Chohoki (Practical Guide to Papermaking) (1798)

B. 長綱抄紙機(Fourdrinier machine)
 フランスのルイ・ロベール(Nicolas-Louis Robert)が1799年に発明した抄紙機です。
 Fig.2は、ワイヤー部(Forming section)、プレス部(press section)、乾燥部(dryer section)で構成された長網抄紙機の簡略図です。エンドレスの長網を用いることにより、連続的に湿紙が形成されます。英国のフォードリニア兄弟が出資したことからFourdrinier の名称が付けられています。
現在の抄紙機の多くは、長網抄紙機の構造を基本にして各セクションの効率化と高度化が図られています。

C. 円綱抄紙機(Cylinder machine)
 1809年に英国のディッキンソン(John Dickkinson)が発明した抄紙機です。円筒状の枠に網を張った円網(cylinder mould)が、ワイヤー部(Forming section)に設置されていることが特徴です(Fig. 3)。紙料が供給されたバット内で円筒が回転することにより、網表面に湿紙が連続的に形成されます。1台の抄紙機に複数の円網を設置することによって、多層構造の特殊紙(speciality paper)や板紙(paperboard)などの製造が可能です。